老人ホームの入居期間 どう予測するか(厚生労働省の統計をもとに)

老人ホームの入居期間はどのくらいになるか、目安を知りたい方もいらっしゃるでしょう。
これは命に関わることで、正確に予測することは難しいことです。
ただし、少なくとも、統計を正確な意味で受け止め事が大切です。
世間では、「男性の平均寿命がこのくらいだから・・・」とか「平均寿命まであと何年だから」という事をよく聞きます。
しかし、平均寿命というのは、若くして亡くなる方も含めた数字です。
老人ホームの入居を検討しているということは、その年齢まで生きることができている人達は、平均あと何年くらい余命があるか、という数字を見る方が良いでしょう。

この記事では、統計の意味や、実際老人ホームで勤務している看護師ならではのエピソードを取り上げ、ご自分なりの入居期間の予測の立て方をお話ししたいと思います。

この記事は、
老人ホーム看護師、福祉住環境コーディネーター
柏木 まき子 が書いています。

学生時代に母とともに祖母の介護を経験。
大学病院で高齢者の医療に従事した後、日本とヨーロッパの老人ホームに7年勤務。
現在、大学院で学びながら、週末は都内の有料老人ホームで看護師をしている。
老人ホームの内側を知る者として、
読者が相性の良い施設やサービスと出会うきっかけを作りたいと思いこのサイトを運営。
幼少時より、祖父母から昔の話を聞くのが大好きで、歴史好きの一面を持つ。

目次

平均寿命と平均余命の違い

平均寿命とは、0歳の赤ちゃんが何歳まで生きるか、という平均のこと。
平均余命はその年の人があと何年生きるかという平均のこと。


平均寿命と平均余命の違い イメージ図

平均寿命を基準に、自分の寿命を考えてはいけない理由 看取りの期間であっても予測より長く生きられることもある

平均寿命を基準に、自分の寿命を考えてはいけない理由は、
平均寿命には、若くして亡くなる方も統計に入っているからです。
すでに年を重ねて60歳、70歳、80歳と到達した方は、その年齢まで生きられた方々の統計を見るのが現実的です。


老人ホームに入居する方の中には、余命数ヶ月とか、余命半年と言われて入居される方がいらっしゃいます。
そのような余命を伝えられた方が、老人ホームではその期間よりかなり長生きされるケースが見られます。

ご家庭で、これまで通りの条件で過ごされる場合は、その余命とあまり差がないかもしれません。

特に24時間看護師が常駐するタイプの老人ホーム(英語ではナーシングホームと呼ばれます。日本では、ナーシングホーム以外に、メディカルホームやホスピタルメントなどと呼ぶ会社もあります)に入居されている場合、積極的な治療ではなくても、24時間吸引をしたり、傷の消毒や処置をしたり、点滴を管理したり、という事ができます。
看取りの期間(積極的に延命治療をせず、自然な最期を見守る期間)を安楽に過ごせるようにとスタッフもお世話することで、結果的に病院の医師が予測した余命より長く生きられる事が多いように感じます。


予測した余命の期間より数ヶ月程度長く生きられる方もいれば、2年、5年と長い場合もあります。
老人ホームの現場で、『看取りの期間』と言われ、介護報酬の看取り加算の期間になっていた方が、元気を取り戻し、看取りの期間から外れるケースを経験する事は珍しくありません。

看護師がいるタイプの施設は、英語ではナーシングホームと呼ばれます。
日本では、看護師常駐タイプの老人ホームをナーシングホーム、メディカルホーム、ホスピタルメントなどと、会社ごとにネーミングに工夫をしています。
名称の印象にとらわれず、看護師がいるタイプの老人ホームなのか、いる場合は毎日いるのか、日中だけなのか、24時間いるのか、など説明時に確認しましょう。
数は少ないですが、医師常駐の施設もあります。

男性:平均余命一覧表(厚生労働省発表の令和2年簡易生命表より)



50歳男性の平均余命33.12年
55歳男性の平均余命28.58年

60歳男性の平均余命24.21年
61歳男性の平均余命23.36年
62歳男性の平均余命22.52年
63歳男性の平均余命21.68年
64歳男性の平均余命20.86年

65歳男性の平均余命20.05年
66歳男性の平均余命19.25年
67歳男性の平均余命18.46年
68歳男性の平均余命17.69年
69歳男性の平均余命16.93年

70歳男性の平均余命16.18年
71歳男性の平均余命15.45年
72歳男性の平均余命14.73年
73歳男性の平均余命14.01年
74歳男性の平均余命13.32年

75歳男性の平均余命12.63年
76歳男性の平均余命11.96年
77歳男性の平均余命11.30年
78歳男性の平均余命10.66年
79歳男性の平均余命10.03年

80歳男性の平均余命9.42年
81歳男性の平均余命8.82年
82歳男性の平均余命8.25年
83歳男性の平均余命7.69年
84歳男性の平均余命7.17年

85歳男性の平均余命6.67年
86歳男性の平均余命6.19年
87歳男性の平均余命5.75年
88歳男性の平均余命5.33年
89歳男性の平均余命4.95年

90歳男性の平均余命4.59年
91歳男性の平均余命4.26年
92歳男性の平均余命3.95年
93歳男性の平均余命3.65年
94歳男性の平均余命3.37年

95歳男性の平均余命3.10年
96歳男性の平均余命2.85年
97歳男性の平均余命2.62年
98歳男性の平均余命2.40年
99歳男性の平均余命2.20年

100歳男性の平均余命2.21年
101歳男性の平均余命1.84年
102歳男性の平均余命1.68年
103歳男性の平均余命1.53年
104歳男性の平均余命1.39年

105歳男性の平均余命1.26年

厚生労働省 令和2年簡易生命表(男)

女性:平均余命一覧表(厚生労働省発表の令和2年簡易生命表より)

50歳女性の平均余命38.78年
55歳女性の平均余命34.09年

60歳女性の平均余命29.46年
61歳女性の平均余命28.54年
62歳女性の平均余命27.63年
63歳女性の平均余命26.72年
64歳女性の平均余命25.82年

65歳女性の平均余命24.91年
66歳女性の平均余命24.02年
67歳女性の平均余命23.13年
68歳女性の平均余命22.24年
69歳女性の平均余命21.36年


70歳女性の平均余命20.49年
71歳女性の平均余命19.63年
72歳女性の平均余命18.77年
73歳女性の平均余命17.92年
74歳女性の平均余命17.08年

75歳女性の平均余命16.25年
76歳女性の平均余命15.43年
77歳女性の平均余命14.62年
78歳女性の平均余命13.82年
79歳女性の平均余命13.04年

80歳女性の平均余命12.28年
81歳女性の平均余命11.53年
82歳女性の平均余命10.81年
83歳女性の平均余命10.10年
84歳女性の平均余命9.42年

85歳女性の平均余命8.76年
86歳女性の平均余命8.13年
87歳女性の平均余命7.53年
88歳女性の平均余命6.96年
89歳女性の平均余命6.42年

90歳女性の平均余命5.92年
91歳女性の平均余命5.45年
92歳女性の平均余命5.00年
93歳女性の平均余命4.58年
94歳女性の平均余命4.19年

95歳女性の平均余命3.82年
96歳女性の平均余命3.48年
97歳女性の平均余命3.16年
98歳女性の平均余命2.88年
99歳女性の平均余命2.61年

100歳女性の平均余命2.37年
101歳女性の平均余命2.15年
102歳女性の平均余命1.95年
103歳女性の平均余命1.77年
104歳女性の平均余命1.60年

105歳女性の平均余命1.45年

厚生労働省 令和2年簡易生命表(女)

入居期間を平均余命+5年で考えることをすすめる理由

老人ホームの入居期間は、平均余命+5年を目安に考えておいた方が良いです。
もし、重い基礎疾患がなければ平均余命+10年でもよいと考えています。
理由は、介護や看護のプロがそばにつき、栄養士の考えた献立でバランスの良い食事をとり、定期的に往診医の診察を受けるという、入居前には難しかった健康管理が実現されるからです。



老人ホームに入るきっかけは、ご自分の体力に不安を感じ始めたり、以前と同じようには身の回りのことができなくなってきた方、入院など加齢による変化が多いことでしょう。

老人ホームに入ると、それまでは三食バランスの良い作ることが大変になっていた方が、栄養バランスの良い食事を召し上がるようになります。このような方の場合、肌の艶や爪の状態が良くなったり、浮腫が改善したりと体調が良くなる方がいます。
また、疾患を持つ方を受け入れている施設では、栄養士がその疾患に合わせた
食事のバランスが悪くて体調良だった方は、食事が整うだけでも元気になっていかれます。

また、規則正しい生活をすることによって体調も良くなっていきます。
高齢者のお世話に経験があるスタッフや往診医が身近にいますので、相談しやすかったり、ちょっとした異変に気づいて対処してもらえたりすることもあります。
家庭で過ごしていれば、多少体調が悪くても病院に行かない人が、老人ホームに入り往診医と契約する事で定期的に診てもらう状態になることがあります。

また、家庭にいる時と違い、食事の準備以外のストレスも減る場合があります。
ストレス軽減を目的に老人ホームに入居される方もいらっしゃいます。

ストレスが原因と言われる病気もあります。
老人ホームに入居され、安心された方は表情も明るくなり、体調が良くなる方もいらっしゃいます。

そのため、平均寿命でも、平均余命でもなく、平均余命+5年は考えておいた方が良いです。
もし基礎疾患がなく、長生きの家系なら10年でも良いと思います。

老人ホームでは、80歳は若い方です。
95〜100歳くらいの方は普通にいらっしゃいます。
105歳を超えると、人数はぐっと少なくなる印象です。

病院と違い、老人ホームは入居時に医療処置がほとんど不要の健康状態の良い方が多く、
入居時のその方の平均余命より長く生きられる方が多い印象です。

私は家族三人でほぼ同時期に同じ施設に入居、全員が100歳を超えている家族を経験したことがあります。
80〜90歳台の兄弟や姉妹で入られることは珍しくありません。
親子で同じ施設を利用する方もいらっしゃるのですが、その入居期間が重なるもしくは、ニアミスということもありました。

老人ホームの入居者の平均年齢は、開設年に影響を受ける

有料老人ホーム入居者の平均年齢は、施設ごとに違います。
老人ホームの入居者の平均年齢に影響するのは、その老人ホームがオープンした年です。
新しい施設は、若い年齢層の割合が高い印象です。
オープン後10〜15年をかけて順々に退去(≒お亡くなりになる)され、入居者が入れ替わっていきます。


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この記事を書いた人

老人ホーム看護師、福祉住環境コーディネーター
自身も家族の介護を経験し、自宅介護と有料老人ホーム勤務の経験を持つ。
自宅介護や、老人ホーム探しに役立つ情報を提供し、読者とその家族を笑顔にしたいと思っている。

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老人ホームをどう選び、入居期間をどう予測するか(全体の流れ まとめ) – 老人ホーム選び へ返信する コメントをキャンセル

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